ダイビングQ&A

脱水と減圧症について

 器材を装着し、潜水準備ができて実際に水に入るのを待っているあいだにもダイバーは汗をかきます。個人の体脂肪率にもよりますが、全体重の40〜70%は水分で、汗でそのバランスが失われてしまいます。そこで脱水状態にならないよう体内の水分のバランスを保っておくことが大切なのです。

脱水状態になるとどうなるか
 脱水状態にならないようには簡単にできるのですが、脱水症状が起こると血液が濃くなり、体内の血液循環をにぶらせます。実際、NOAA(National Association of Oceanic and Atmospheric Administration)は、脱水状態になったダイバーは、体内の筋肉や組織の血液の循環が悪くなりその結果、減圧症の症状と大変似てくると述べています。また、脱水症状になると血管を収縮するため寒さに対する抵抗が弱くなったり、体熱を保持する力がなくなります。全体として運動力が低下します。これは、揺れるボートに近づかなくてはならなかったり、潮流に逆らって強くフィンで進んでいかなくてはならないときなど問題になります。
 さらに、ダイバーの脱水症状と減圧症の症状はたいへん見分けにくいものです。例を上げると、体重の1%〜5%の水分がなくなると、疲労感、眠気、イライラなどの症状が出ます。5%〜10%の脱水症状になると、たいてい入院しなければなりません。シビレがあったり、頭痛、呼吸困難など、すべて減圧症にかかったときと同じ症状が出ます。
 しかしながら、ほとんどのダイバーはウェットスーツを汚してしまうことを恐れて、潜水の前になにも飲みません。あるいは、船まで戻る面倒や船の先端まで行くことを考えるとトイレにいく必要がないように飲まないことが多いのです。そのため、岸に戻ってからそこの設備に一直線に向かっていきます。そのころまでにはどのダイバーも多少脱水症状になっているはずです。ジョリー・ブックスパン博士が書いた、大変読みやすい『普通の英語で読める潜水生理学』(この本は、DANあるいは水中高圧医学協会で入手することができます)のなかでこのように書いてあります。「ダイバーでない一般の成人がほとんど座った状態でいて、1日に排泄物、汗、呼吸などを通して約2リットル弱の水分を失います。この水分は、水を飲むことによって補われなければなりません。暑いときに汗をかきながらしかもネオプレーンやゴムでできたウェットスーツに身を包み、重い器材を装着しているダイバーは、恐らく通常の成人より14倍以上の水分が汗で出ていってしまう可能性があります。これに重労働が加わるとその量は50倍にもなるでしょう」。
 さらに、カナダ海軍潜水医学専門家であるデイビット・サワッツスキー少佐(医学博士)は、1996年5号のダイバー・マガジンの「脱水症状と潜水」という記事の中で「1.9%脱水状態では耐久力が22%減少し酸素効率が10%減ります。同じ実験で、脱水状態が4.3%になると48%歩行力が減り、酸素効率は22%減少します」と発表しました。塩の匂いのする玉のような汗が額に流れていないからと言って、汗をかいていないということではありません。人は、皮膚呼吸や呼吸器官を通して常に汗をかいています。ですから、必ずしもシャツが汗でびっしょりとなるわけではありません。
 実際、この前の潜水のとき口が乾いてしまったのを覚えていませんか。それは正しく水分のバランスがとれていない兆候かもしれません。表面大気はほとんど湿気を含まない圧縮されたタンクのエアと違い通常30%〜40%の水分を含んでいます。肺胞の血液中でガス交換が行われる前に肺を体温と同じ温度で100%湿った状態にするには、タンクエアが湿った鼻や口から通ってこなければなりません。この湿気は、息を吐くたびに失われます。このようにして、サワッツスキー少佐の計算によると、ダイバーは80c.f.のタンクエアーを吸っているだけでコップ一杯分の水分を失います。
 正しく水分のバランスがとれていないと潜水の結果、どんなに正しく潜水計画を立ててそれにしたがっても、浮上してきたときには余分な窒素が体内にある可能性があります。この計算に入っていない窒素量ははじめの潜水、また水面休息の時間にもよりますが、次の潜水のときにも減圧症にかかる危険を高めます。

防止策
 サワッツスキー少佐(最近ケーブダイバーの救助作業責任者としてメダルを増やした)は、記事の中で高タンパクの食べ物は実は脱水状態になりやすくする働きがあると述べています。少佐は、ステーキやハンバーガーなどの高タンパクの食べ物は窒素排出物(窒素ガスではない)を産出し、この窒素排出物は肝臓を通って尿として排泄されなければなりません。もし、はじめから体内に十分な水分がないと、この過程は脱水状態を早く招く引き金となります。
 しかし、ダイバーはパスタやスパゲッティ、野菜やベーグルなどの炭水化物を多く含んだ食べ物を食べることによりバランスを保つことができます。これらの食べ物は主に水分と二酸化炭素に変化し、体内の水分を増やします。
 簡単に自分の脱水状態を調べるには潜水の前に尿の色を見てチェックするのが一番です。目安は、尿の色が濃ければ濃いほど、脱水状態になっているということです。脱水状態から抜け出るには尿の色が透明になってくるまで水分を補給することだと医師たちは勧めています。

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