浮上時の鼻血の原因は?
ダイビングを終え、爽快感に浸っていると、友達が自分のことを指差して笑う。
何かと思ったら、鼻血が!なんて経験をしている人は意外と多いのでは?
そこで、今回は鼻血の話。
Q. 浮上するとき、いつも鼻血が出るのですが、どうしたら防げるのでしょうか?
A. 原因は、耳・副鼻腔のスクィーズと、肺破裂
浮上後に鼻血が起こる原因を列記しますと、(1)耳(中耳)のスクィーズ、(2)副鼻腔のスクィーズ、(3)息を止めたまま浮上して起こす肺破裂があります。頻度としては、中耳スクィーズによる鼻出血が多いと考えられています。もちろん地上での生活中にふつうに見られる鼻血(鼻出血)、すなわち鼻中隔のキーゼルバッハ部位(解剖学用語)の出血は潜水の有無に関連しないので除外し、そのほかの鼻出血の原理について述べます。
中耳スクィーズで無理をすると鼓膜が破れてしまうということは、ダイバー諸氏ならみな知っていることです。
しかしながら、その前段階では鼻出血を起こす病態があります。耳抜きが上手にいかないと、80〜120cmの水中圧で耳管はロックし、耳の痛みを感じます。無理してそのまま潜降を続けると、鼓膜は破れます。しかしながら、鼓膜が破れる寸前、中耳腔は、鼓膜内外の圧力差により、相対的には陰圧になっており、たとえ鼓膜が破れなくとも、損傷されやすい中耳腔の表面粘膜が陰圧吸引された状態にあります。その結果、粘膜からは滲出液がにじみ出たり、中耳腔内に出血を起こします。したがって、耳抜きが成功していなくとも、中耳腔にこの血液あるいは滲出液が出ると、その分中耳腔の容積が減るので痛みは緩和します。たぶん、この際には耳閉感があると思いますが、何分にも潜水中なのでふつう気づきません。
さて浮上の段になりますと、中耳内の空気は膨張し、耳管を通って鼻のほうへ出ていきます。この際いっしょに中耳腔に溜まった血液と滲出液が鼻に出て、鼻出血となるわけです。
風邪とも関係する副鼻腔のスクィーズ
次に副鼻腔のスクィーズです。これは中耳スクィーズと同様なメカニズムで副鼻腔に滲出液と出血が出た結果、浮上時に膨張した副鼻腔内の空気と一緒に鼻血となって出るわけです。
両スクィーズの根本的な相違は、中耳スクィーズでは耳ぬきによって中耳腔の調圧が可能ですが、副鼻腔のスクィーズでは調圧手段はありません。ベテランダイバーといえども、副鼻腔スクィーズが起こってしまったら、その日のダイビングは断念すべきです。
副鼻腔は、硬い頭蓋骨の中に左右一対ずつ合計6ヵ所あり、それらの空洞の表面は、薄い粘膜が覆っています。それぞれの空洞は部屋の窓のように鼻腔に向かって1ヵ所が開口しています。ただし、眉間にある上顎洞だけは鼻前頭管という細い管でつながっています。したがって、通常副鼻腔のスクィーズを起こしやすいのは前頭洞であります。
風邪を引くと誰でも鼻が詰まったような感じですが、これは鼻腔粘膜が膨れるからです。鼻前頭管は鼻腔に開口しているので、鼻粘膜の膨れがこの小管にも及び、鼻前頭管が閉塞するわけです。したがって、ここを開通させるには薬剤によって膨れを引かせるしかありません。しかしながら、薬剤の効果の持続時間を配慮した使用法は大変難しいものです。
風でぬけが悪い日には、躊躇せず、その日のダイビングを断念することをすすめます。






