ダイビングQ&A

パニックとその対処法について

ダイビングをしていていちばん怖いのがパニック。
ベテランダイバーでさえ起すことのあるパニックの原理と対処法とは?

Q. 私はダイブマスターですが、ダイビング中、突然BCのインフレーターホースが壊れ、BCにエアが入りっぱなしになり、予想外にあわててしまい、パニックになりそうでした。こうした場合、パニックに陥らないように対処するにはどうしたらよいでしょうか?

A. パニックは精神的なコントロールを失い、適切な対処ができなくなること。
 これには次の二つの事柄が含まれていると思います。
(1) 状況は、パニックに陥る寸前のニアミスである。そして、ダイブマスターでさえあわてるとパニックに陥る
(2) パニックの回避方法

 まず、最初に言葉の定義から述べると、「アクシデント(事故)とは、計画にない、しかも、コントロールを失った不測の事態」と定義されます。たとえば、氷の張った道路で運転中に車が滑ると、コントロールを失ってしまいますが、何かに衝突すれば、事故になります。もし、再びコントロールを回復できれば、ニアミスに終わります。
 しかしながら、このニアミスの状況であっても、事故を案じながら必死にコントロールを取り戻そうと試みている間は、強烈な「恐怖感」と戦っているわけに相違ありません。パニックは、これが進展して、自分自身の精神的なコントロールを失うので、適切な対処ができなくなることです。したがって、ニアミスの事態にちょっとした悪条件が重なると、一挙にパニックに陥るわけです。

ダイビング中の呼吸の変化は注意が必要
 さて、生理学者のキャノン博士は「強敵との闘争、激しく怒る、深い悲しみ、恐怖」など、強力な精神的作用が加わると、私たちの身体に起こる生理学的変化を研究した結果、それが怒りであるか、恐れであるか、喜びであるか、悲しみであるかなどとはいっさい無関係に、動物は、同じ反応を示すことを明らかにしました。すなわち、心拍数の増加、血圧上昇、呼吸数の増加、血糖値の上昇、胃腸運動の抑制、散瞳、立毛などです。この生理学的反応は、キャノンの緊急反応と呼ばれ、交感神経を刺激したのと同じ状態なのです。
 また、強烈な恐怖感が起こると、「息苦しさ、動悸、胸を締めつけられるような感じ、めまい感、あるいは起こっている事象が現実ではないというような心理的反応」が感覚されます。ニアミスの際には、大なり小なりこうした身体反応と精神的反応がすでに起こっているのです。
 こうした反応の中で、ダイビング中ニアミスに遭遇した場合、特別問題となるのは、呼吸の変化です。心理的不安がきっかけで、呼吸数が増し、あっという間にエアの多量が消費されてしまいます。これは、初心者ダイバーが想像以上にエアを消費する最大の理由であり、それが不安を一層かき立て、パニックの前段階となっていることをインストラクター諸氏やガイドブックの方々は忘れないでいてほしいと思います。

パニックは前段階での予防が大切
 さて、パニックの回避方法についてですが、私自身には「たゆまぬ訓練と周到な準備」しかないと言い聞かせていますが、『ダイビングに関するストレスとパフォーマンス』の著者・バックラック教授は、「パニックの前段階にあるダイバーは、一定のパターンを示す行動が見られるので、その段階で予防しなさい」と述べています。図は1988年に、バックラック教授が日本で公演した際のスライドです。ダイバーが、いつまでもはしごやアンカーロープから離れないでいたり、潜水中、水面の方向を頻繁に眺めることや、動作が急に早くなること、そして、無事水面に浮上した後でも必要以上に体を浮き上がらせた立ち泳ぎなどが、パニックの前段階の兆候であると、親切丁寧に解説していました。
 「ベテランダイバーでさえもパニックに陥る危険性があること」を忘れないようにしたいものです。

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